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『羊と鋼の森』(宮下奈都)を読んだ感想。ゆっくりと進むことの大切さを学ぶ。

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こんにちは、すっちー(@succhi104)です!

 

今回は、宮下奈都さんの『羊と鋼の森』を読み終えたので感想を綴りたいと思います。

本屋大賞受賞作になり累計120万部を突破し、山崎賢人さんが主演で映画化にもなった話題の作品。

まだ読んだことがない人も、読んだことがある人にも魅力が伝わるように書いていきますので、ぜひチェックしてください!

 

読んでいるうちに心が穏やかに、どこからか音楽が聞こえるような美しい作品でした!

 

 

本書のあらすじ

 

 

物語の始まりは主人公の外村が高校生の時。

時間を持て余し、したいこともするべきことも見つかっていなかった外村はどこにでもいる普通の男子高校生でした。

そんなとき偶然にも、学校の体育館にあるピアノの調律に訪れた調律師の板鳥との出会いから、外村の調律の世界が開かれていきます。

 

ピアノを前にして音と向き合う板鳥を目にし、外村は調律の世界に急激に興味を示します。

板鳥の持っている調律道具を見て「この道具でピアノをどうするんだろう」「ピアノで何をするんだろう」と頭の中で問いが生まれます。

生まれてきた好奇心を胸に外村は高校卒業してから調律の専門学校へ進学、必死に2年間勉強をして板鳥さんがいる江藤楽器に就職します。

 

板鳥さん以外にも、長年「音」と向き合ってきた個性的な先輩たちやピアノを弾く双子の姉妹に囲まれ、「調律とは何なのか」「音と向き合う先に何があるのか」、調律師として成長していく外村という一人の青年の成長を描いたストーリーです。

 

「音」と「森」というワードがたくさん出てき、とても広くて深い意識に持っていかれる作品という印象を持ちました。
読んでいて心地いい文章はまさに静謐な筆致です。

 

感想まとめ

音、音楽、仕事に向き合う姿がいい

本書全体を通して私が好きなシーンが、主人公の外村が音、音楽、仕事に向き合っているときです。

調律はただ音を整えればいいだけではなく、ピアノの所有者が望む音を作り出す必要があることに本書を読んで知りました。

 

 そのときのお客さんは、できるだけかたい音で、と注文をつけてきた。

ところが、できあがりの音を聴いて、なんだか音がゴツゴツしている、と不満そうだったのだ。

(中略)

「やわらかい音にしてほしいって言われたときも、疑わなきゃいけない。どのやわらかさを想像しているのか。必要なのはほんとうにやわらかさなのか。技術はもちろん大事だけど、まずは意志の疎通だ。できるだけ具体的にどんな音がほしいのか、イメージをよく確かめたほうがいい」(p.43)

 

明るい音、暗い音、かたい音、やわらかい音。

その中でもめいっぱい明るい音なのか、少し明るめ程度の音なのか。

お客さんによってイメージしている音は十人十色で音の形容の仕方は様々、そのイメージに合わせた調律をしなければならない…。

どんなに技術を磨いても、何年たっても難しいお仕事ではないかと感じました。

 

世の中には難しいお仕事ってたくさんあるけど、音を再現するって中でも難しいのではないでしょうか…。
技術とセンスが問われるお仕事ですね!

 

そんな調律の世界と音、お客さんのイメージする音と真剣に向き合う主人公を見ていると、調律のお仕事ってステキだと思いました。 

 

調律の世界もこつこつ、こつこつ。

早く一人前の調律師になりたいと努力する外村ですが、技術や経験はそう簡単には身につきません。

どうしたら憧れている板鳥のような調律ができるのか、外村に板鳥はこう答えを導きます。

「焦ってはいけません。こつこつ、こつこつです」

(中略)

「こつこつ、どうすればいいんでしょう。どうこつこつするのが正しいんでしょう」

必死だった。息を切らしている僕を板鳥さんは不思議そうに見る。

「この仕事に、正しいかどうかという基準はありません。正しいという言葉には気をつけたほうがいい」

そう言って、自分にうなずくみたいに何度か小刻みに首を動かした。駐車場へ続く通用口のドアを開けながら、

「こつこつと守って、こつこつとヒット・エンド・ランです」

こつこつって野球か。そんなわかりにくい比喩でいいのか。

「ホームランはないんですね」

開けたドアを押さえながら僕は確かめる。板鳥さんはしげしげと僕の顔を眺めた。

「ホームランを狙ってはだめなんです」(p.20-21)

 

こつこつ地道に成長していく、ホームランはない。

これは調律の世界に限らず、どんなことにも共通して言える事実なのではないでしょうか。

 

例えば、私もやっているこのブログの世界。

ブログは少しずつでもこつこつ記事を書いていくことでアクセスが増えたり、文章力が成長していきます。

中には、圧倒的なセンスや才能で短期的に成果をだす人もいます。

しかし、才能がある人たちもこつこつ継続ができなければそこで終わりです、成長は望めません。

 

継続することの大切さを、改めてこの本を通して学ぶことができました。

 

個性的なキャラクターと普通の青年外村との関わりがいい

物語の主人公とは、どこにでもいるようなありふれた主人公が多いですよね?

この『羊と鋼の森』の主人公、外村も例外ではありません。

あらすじでも少し紹介したように、外村は高校で特にやりたいこともなく生活をしていました。

そこで新たに調律という興味の持てるものに出会いましたが、センスや才能があるわけでありませんでした。

生まれて初めて北海道を出た。本州にある調律師養成のための専門学校に、二年間。

ピアノの工房に併設された簡素な教室で、調律の技術を覚えるためだけに二年間を使った。

同期はたったの七人だった。

朝から晩まで調律の技術を学んだ。

工房の倉庫のようなところで授業が行われていたので、夏は暑く、冬は寒かった。

まるごと一台の修理を手掛けたり、外装を塗ったりする実習もあった。

課題は厳しく、到底自分にはこなせないと暗澹たる気持ちになりながら毎晩遅くまで取り組んだ。

迷い込んだら帰れなくなると聞かされた森に、もしかしたら足を踏み入れてしまったんじゃないか。

幾度もそう思った。

目の前は鬱蒼と茂って、暗い。(p.18)

 

悩みながらも前に進んできているのが読み取れました。

 

そんな中で、江藤楽器には板鳥をはじめとした個性的な先輩たちがいます。

七年目の先輩で例え話の多い柳、お客さんの音の好みを丁寧に聞いて調律するタイプ。

四十代で痩せていて銀縁眼鏡の秋野、どこか冷めている印象があるが実は色々考えてお仕事をしている、ピアニストを目指していた時期もあった。

 

そしてこのストーリーで一番大きな関わりがあるのが、双子の姉妹、和音と由仁だ。

この双子のことを語ってしまうと、本書を読むときに楽しさが減ってしまうかもしれない。

なのでぜひ、本書を手にとって読んでいてほしい。

先輩たちや双子の存在が、外村の調律をさらなる世界に連れて行ってくれている。

会話ややり取りの一つ一つを楽しめる作品になっています。

 

おわりに:人ともピアノとも向き合う難しいお仕事が「調律」

 『羊と鋼の森』を読んだ感想をまとめていきました。

少しでも本書の世界観や、魅力が伝わっていたら嬉しいです。

 

調律というお仕事を本書を読むまで存在すら知らなかった私ですが、人ともピアノとも向き合わなければいけない大変なお仕事だと感じました。

「暗くて出口の見えない森 」という表現がまさに似合う。

迷ってしまっては抜け出せない恐怖と底知れぬ不安、しかし抜け出せたときには壮大な景色が見える。

 

あなたもぜひ、調律という深い世界を覗いてみてはいかがでしょうか?

 

今回紹介した本はこちら↓

 

最後まで読んでいただきありがとうございました! 

 

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